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【子どもの発達で重要な遊びと模倣について】ピアジェ理論を例に考える

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子どもが発達していく上で、基本となる発達の原則があります。

発達心理学者のジャン・ピアジェは、子どもが外部の世界を内部の世界へと取り込んでいく過程を、「同化」「調節」といった用語で説明しています。

 

そして、子どもが外部世界を内部世界に取り込み、内部世界を豊かなものにしていく上で、〝遊び″と〝模倣″はとても重要だと考えられています。

 

それでは、子どもの発達で重要な遊びと模倣は、ピアジェ理論を踏まえると、どのような関連性があると考えられているのでしょうか?

 

そこで、今回は、子どもの発達で重要な遊びと模倣について、ピアジェ理論を例に理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「藤野博(編)(2008)障がいのある子との遊びサポートブック 達人の技から学ぶ楽しいコミュニケーション.学苑社.」です。

 

 

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子どもの発達で重要な遊びと模倣について:ピアジェ理論を例に

 

ピアジェ理論について

まずは、「同化」「調節」といった用語の意味について見ていきます。

 

ピアジェ理論には、物事を理解する枠組みとして「シェマ」といった用語を使用しています。

例えば、子どもが〝車″といった概念を理解していく過程を考えたとします。

子どもは、車が持つ様々な属性(形・走るもの、乗りもの、車に関するエピソードなど)を自らの内部に取り込んでいきます。

この際に、既存の「シェマ」に様々な車の情報(属性など)を付与していくことを「同化」と言います。

一方で、「同化」の作業を進める上で、車には該当しないものも見つけていきます。

例えば、電車やバスなどは同じ乗り物ですが車とは異なるものです。

子どもは既存の車の「シェマ」に該当しないものを認識・区別していきます。これは、「調節」と言われるものです。

このように、「同化」と「調節」を繰り返していきながら、「シェマ」をアップデートしていくことを「均衡化」と言います。

子どもは、様々な外部世界を認識していく上で、既存の「シェマ」を「同化」「調節」「均衡化」のプロセスを通して更新してきながら、外部世界を内部世界(「シェマ」)へと取り込みながら、様々な能力(運動・認知・言語・社会性など)を発達させていきます。

 

 

遊びと模倣について:ピアジェ理論との関連を例に

それでは、以上のピアジェ理論を例に見た際に、遊びと模倣は「シェマ」の獲得過程とどのような関連性があるのでしょうか?

以下、著書を引用しながら見ていきます。

ピアジェは、同化の働きは「遊び」の活動に、調節の働きは「模倣」の活動に見ることができるといっています。

 

遊びの中に子どもたちは、自分が経験したいいろいろなことを取り込みます。偶然できたことをもう一度再現しようと試して、もう一度できたら、今後はそれを何度も繰り返し自分の活動のレパートリーに加えていきます。それが同化です。

 

模倣は誰かがしていることを手本にしてそれをやってみることです。好きなことを自分のペースで好きなようにやるのではなく、相手に合わせなければなりません。

 

著書の内容から、ピアジェ理論を例に見た際に、同化」の働きは「遊び」の活動に、調節」の働きは「模倣」の活動に見られると記載されています。

子どもは、自分が興味関心のある様々な「遊び」を内部世界へと取り込もうとしていきます(「同化」)

そして、様々な遊びの中で、他者の行動や遊びのフォーマットなどを、「模倣」しながら「調節し、「均衡化」を図りながら、既存の「シェマ」を更新させていきます。

 

例えば、ボールを投げたり捕ったりする遊びについて見てみます。

子どもは、他者がこうしたボール遊びをしている様子を見て、興味関心が湧き、自分もやりたいと遊びに参加していきます。

その中で、投げたり・捕ったりすることを何度も繰り返し行っていくことで、遊びのレパートリーに加えていくことができます。

これは、同化」の過程だと言えます。

一方で、こうしたボール遊びの中には、相手の動作を真似る(投げ方・捕り方)に加えて、交代でやり取りする(投げる役・捕る役)などのルールが発生します。

こうした動作を真似ること・遊びの型(ルールなど)を覚えていくことは、他者の存在も含めて外部世界に自分の身体を合わせていくことでもあります。

これは、調節」の過程だと言えます。

 

子どもは、「遊び」と「模倣」を通して、内面世界を豊かにしていくことができます。

こうした力は、子どもが生まれながらにして持っている力でもあります。

 

 


以上、【子どもの発達で重要な遊びと模倣について】ピアジェ理論を例に考えるについて見てきました。

子どもは、自身の経験を通して、内面世界を広げていきます。

その際に、遊びの持つ意味はとても大きいと言えます。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場において、様々な遊びを通して、子どもの内面の成長に貢献していけるように取り組んでいきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

関連記事:「【〝遊び″の〝内容″について】Piagetを例に考える

 

 


療育(発達支援)に役立つ遊びに関するお勧め書籍紹介

関連記事:「療育(発達支援)に役立つ遊びに関するおすすめ本【初級~中級編】

 

 

藤野博(編)(2008)障がいのある子との遊びサポートブック 達人の技から学ぶ楽しいコミュニケーション.学苑社.

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