
女性の発達障害は気づきにくいと言われています。
一方で、ここ最近、女性の発達障害の割合は高くなっており、決して珍しいものではなくなってきています。
一方で、男性の発達障害とは異なる特徴があるなど、女性の発達障害には気づかれにくい背景となる特徴・行動があるのも事実です。
それでは、なぜ、女性の発達障害は気づきにくいのでしょうか?
そこで、今回は、女性の発達障害はなぜ気づきにくいのかについて、臨床発達心理士である著者の考察も交えながら、女性の発達障害の特徴を踏まえて理解を深めていきたいと思います。
※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。
今回参考にする資料は「内山登紀夫(2025)児童発達支援・放課後等デイサービスのための発達障害支援の基本.日本評論社.」です。
【女性の発達障害はなぜ気づきにくいのか?】女性の発達障害の特徴を通して考える
女性の発達障害は気づきにくい・気づかれにくいことは事実としてあります。
この事実を深めていくために、以下の内容について触れていきます。
1.女性の発達障害は少ないのか?
2.女性の発達障害(ASD)の特徴
3.女性の発達障害が気づかれにくい背景
1.女性の発達障害は少ないのか?
冒頭でも述べた通り、結論から言えば、〝NO″です。
以下、著書を引用しながら見ていきます。
最近のデータになればなるほど、男女比は近づいてきていて、女子も多いことがわかってきました。
女性の発達障害関連の書籍を見ると、発達障害の男女比はほとんどないという事実がわかってきています。
一方で、世間一般、特に子どもにおいては、男子の発達障害の方がまだまだ多いといった印象があります。
著者はこれまで幼児施設・放課後等デイサービスなどで、発達障害の子どもを多く見てきましたが、過去から今も含めて、まだまだ男子の方が多いです。
2.女性の発達障害(ASD)の特徴
以下、著書を引用しながら見ていきます。
ASDの女子・女性の特徴として、同情心が強いこと、きわめて固い決意、身体的な外観や服装に過度に細かい、または過度に強迫的である、テレビや映画の影響などで異なる役を演じて生きることなどが議論されています。
著書の内容から、女性の発達障害(ASD)の特徴として、同情心の強さ、意思の強さ、身なりが過度に几帳面、過度な強迫性、カモフラージュなどがあると考えられています。
著者がこれまで見てきた女性の発達障害(ASD)の特徴と比べて見ると、特定の内容・事柄に対して強く感情移入をするなど同情心が強いことはあると感じます。
基本的に、男性よりも女性の方が共感能力において、発達障害の有無を問わず高いのだと言えます。
また、一度決めたことをやり抜こうとする意志の強さを持っている人も少なくないように思います。
一方で、外観・身なりに関しては、過度に細かい人もいれば、それほど気にしていない人もいるように思います(いつも同じ服・似た服を着ているなど)。
強迫的な傾向の強さはASDの人によく見られるなど、男女共に共通している特徴のように思えます(こだわりと判別がつきにくい場合もあります)。
自分ではない人を演じて生きる、いわゆる〝カモフラージュ″については後述します。
3.女性の発達障害が気づかれにくい背景
以下、著書を引用しながら見ていきます。
男子は低年齢のうちから対人・コミュニケーションの困難に大人が気づくことが多いですが、女子は思春期以降になって初めて対人交流の困難に本人や周囲が気づくことが多いようです。知能が高い女子は自分の状態を隠したり(カモフラージュ)、代償(隠すだけではなく過度に女の子らしく振る舞うなど)することができます。そのため、発達障害の特性に周囲が気づかないことが男子より多いのです。
著書の内容を踏まえて言えば、〝なぜ、女性の発達障害がきづかれにくいのか?″といった背景には、女性にある本来的なコミュニケーション能力の高さ(男性と比べて高い)、自分の特性を隠す傾向(カモフラージュ)などが影響していると言えます。
一方で、思春期以降になり、より高度な集団活動やコミュニケーションスキルが求められるようになると、本人が適応していくのが難しくなり、そこで初めて発達障害の特性が顕在化してくるのだと言えます。
もちろん、個人差があるため、顕在化してくる時期は、成人期・中年期以降になる場合もあります。
顕在化の背景は、前述した内容(学校生活:集団活動やコミュニケーションスキルなど)に加えて、大学に入学して初めて自分でカリキュラムを組み実行すること(計画性と実行力)、仕事でのマルチタスク、家事や育児のマルチタスクなどにおいて、本人が日常生活・社会生活の中でうまくやっていくことが難しくなり、そこで初めて、〝自分は発達障害なのでは?″と気になり、初めて気づくといったケースも多いとされています。
その他、興味関心においても男女で差があると考えられています。
以下、著書を引用しながら見ていきます。
特別な興味関心にも男女差があります。男子は多動で、攻撃的で、技術的な趣味や数字に関心があり、女子はより受動的で、物よりも人についての情報を集めることが多く、興味関心は定型発達の女子と類似していると言われています。有名人、映画、音楽、ディズニー、人、メロドラマ、ファッションなどに過度に集中してしまうのですが、関心のあり方そのものは定型発達の女子と似ています。
著書の内容あるように、女子は男子と比べて、興味関心は定型発達の女子と似ている傾向があります。
男子が非常にマニアック・狭い関心領域に興味を見せるのに対して、女子は人への興味が高く、定型発達女子と興味関心が似ているため、〝興味関心″をキーワードに見ても、女子の方が発達障害の特徴が分かりにくいのだと言えます。
著者の印象としても、女子は言語能力が高く、かつ、共感能力がもともと高いこともあり、周囲に合わせる能力が男性に比べて高いと感じます。
中でも、知能が高い女性の場合、なかなか発達障害の特徴は見えてこないように思います。
一方で、高度なマルチタスクを要する内容、特に、対人関係が含まれた内容に関しては、ASDの発達障害の特徴が顕在化してくる印象があります。
重要なことは、本人が周囲の期待に過剰に応えることで無理を強いられるなど、本来自分が生きたいように生きれず、過剰適応・バーンアウトなどを起こしてしまわないような環境調整・サポートなどを受けていくことにあると感じます。
以上、【女性の発達障害はなぜ気づきにくいのか?】女性の発達障害の特徴を通して考えるについて見てきました。
今回は、参考著書を中心に著者の考察も交えながら、女性の発達障害がなぜ気づきにくいのかについて見てきました。
男性と比べて分かりづらく、そして、理解がまだまだ不足している女性の発達障害ですが、割合としては、ほぼ男性と変わらないと言われています。
そのため、潜在的なニーズはとても高い可能性があります。
発達障害への支援で大切な観点は〝予防″です。
そのため、潜在的なニーズをいかに可視化させていきながら、早期発見・早期支援に繋げていくことが大切です。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も女性の発達障害についても理解を深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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内山登紀夫(2025)児童発達支援・放課後等デイサービスのための発達障害支援の基本.日本評論社.