発達障害児支援において〝ユーモアのセンス″を持った関わりが大切です。
著者も長年療育現場で多くの子どもたちと関わってきていますが、〝ユーモア″は時に最大の支援とも感じるほど絶大な効果を発揮することがあります。
一方で、関わりの中で〝ユーモア″が増えることで、子どもが物事に真剣に取り組む力を失ったり、悪ふざけが行き過ぎてしまうのではないかと思われている方もいるかもしれません(昔の著者もそのように考えていた時期がありました)。
それでは、ユーモアはどのような観点から大切だと言えるのでしょうか?
そして、発達障害児支援の現場においてユーモアは必要なのでしょうか?
そこで、今回は、ユーモアのセンスの大切さについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「加藤博之(2023)がんばりすぎない!発達障害の子ども支援.青弓社.」です。
ユーモアのセンスの大切さについて
以下、著書を引用しながら見ていきます。
いろいろな専門家を見ながら関わりが上手だと感じる人に共通する部分として、専門性にプラスして、「おちゃめさ」「子どもっぽさ」「ユーモアのセンス」を持ち合わせていることが挙げられます。
子どもと関わっている姿は、大人対子どもというよりも、まるで子ども同士が一緒に遊び、楽しんでいるといった感じです。
著者もまだまだ未熟ではありますが、一応、発達支援の専門性のあるスタッフの一人です。
専門家と言えば、目の前の現象に対して、頭を使って問題を見つけたり、それに対する解決策を論理的かつ納得できる説明の仕方で周囲に伝える力を持っている人だと著者は考えています。
専門家とは、一見すると頭で考えるイメージが強いかもしれませんが、発達障害児支援(療育・発達支援の現場)において、専門性が高いと感じる方の多くは、知識に加えて、子どもとの関わりもまた上手であると思います(著者がなりたい人物像でもあります)。
そうした人は関わりの中に、どこか心に余裕があり、そして、楽しさ、温かさ、穏やかさがあるといった印象があります。
そして、子どもとの関わりのうまさの中には、著書にもあるように、〝ユーモアのセンス″が必要です。
〝ユーモアのセンス″のある専門家とは、子どもの懐に入るうまさがあると思います。
誰でも他者との関わりの中で楽しい感覚を持つことができれば、心の壁が崩れていき、心が開き、自分の気持ちをうまく表出できるようになると思います。
〝ユーモアのセンス″がある人とは、このように相手の心の壁を良い意味で壊し、心を柔軟にしていく力のある人のことだと著者は考えています。
ユーモア>まじめさが大切な理由について
一方で、冒頭にも書きましたが、〝ユーモア″が多くなることで、子どもたちのまじめさが減り、ふざける行為が増えるのではないかと懸念される方もいるかもしれません。
この点について、引き続き著書を引用しながら見ていきます。
まじめさは大切ですが、人が生きていくということは、もっと柔軟で豊かなものでなければなりません。そのため、まず大人自身が子どもに対してユーモアたっぷりに関わることが必要です。
成長するにつれて「ふざける」と「まじめにする」をきちんと区別できるようになっていきます。
成長するためには、一人の人間にはいろいろな面があることを理解する必要があります。
日本人は基本的に勤勉であり、まじめだと言われています。
しかし、世界の幸福度ランキングを見ると低い水準にあります。
それは、全体的に見て〝ユーモア″が足りていないことも要因としてあるように思います。
どこかいつも忙しく、笑いや冗談が少ない印象があります。
〝ユーモア″が足りない(あるいは必要ではないと考えている)大人からの影響を子ども受けることで、子どもたちは勤勉にはなるかもしれませんが、生きる上での柔軟性や楽しさを学ぶ機会を失ってしまう可能性があります。
著書には、大人が子どもに関わる際には、〝ユーモアたっぷり″に関わることが大切だと記載されています。
そして、子どもは成長過程の中で、〝ふざける″と〝まじめにする″とを区別できるようになるなど、人間には様々な側面があることを理解できるようになるとの記載もあります。
つまり、〝ユーモア″を持って関わった方が、子どもの柔軟性と人間に対する理解力が高まっていくと言えます。
もちろん、まじめさも大切です。
一方で、今回見てきた理由から〝ユーモア″を大切にした方が、人生が豊かになり、子どもたちの育ちにもプラスの影響があると考えられます。
以上、【ユーモアのセンスの大切さについて】発達障害児支援の現場を通して考えるについて見てきました。
著者はこれまでの療育現場の中で、‟ユーモア″を持って関わり続けた方が、子どもたちはよりイキイキと活発に活動するようになり、思考の柔軟性も高まっている印象があります。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も自身のユーモアのセンスに磨きをかけていきながら、日々の子どもたちとの活動を楽しんでいきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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