発達障害児支援で有名なアプローチ方法として、〝ペアレントトレーニング″があります。
〝ペアレントトレーニング″は、その名の通り、親を対象としたアプローチ方法になります。
それでは、ペアレントトレーニングとは一体どのような点に重きをおいた内容になっているのでしょうか?
そこで、今回は、ペアレントトレーニングとは何かについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「岩坂英巳・宮崎義博(2021)「うまくいかない」ことが「うまくいく」に変わる!発達障害のある子どもがいきいきと輝く「かかわり方」と「工夫」.幻冬舎.」です。
ペアレントトレーニング(ペアトレ)について
以下、著書を引用しながら見ていきます。
「褒め方」を中心とした「子どもに応じた接し方」を身につけるためのプログラムとして、「ペアレントトレーニング」(通称:ペアトレ)があります。
アメリカ、イギリス、カナダでは、発達障害の治療の基本として推奨されており、日本では「ADHDの診断・治療ガイドライン」のなかでも、(中略)有効な支援方法の一つとして取り上げられています。
著書の内容を踏まえると、ペアレントトレーニング(略してペアトレ)とは、親が子どもへの接し方・関わり方を〝褒める″を中心として学ぶプログラムだと言えます。
つまり、これまで発達障害児が見せる行動に対して、その親が〝叱る″〝注意する″ことによって、親子関係が悪循環に至っていたサイクルを〝褒める″関わりを通してプラスの循環へと変えていくアプローチだと言えます。
発達障害児は、定型発達児とは異なり、発達特性などが影響して、自らの力では行動の改善が難しいことが多くあります。
そのため、自らの努力で改善が難しいことに対して、周囲から叱責を受け続けることで、〝自尊心″が低下してしまうことがあります。
〝自尊心″の低下を防ぎ、子ども自身が自信と意欲のエネルギーを高めていくためにも、ペアトレの視点、つまり、親自身が〝褒め上手なる″視点はとても大切になります。
それでは、次に、ペアトレの視点の重要性について、著者の療育経験から学んだことについて見ていきます。
著者の経験談
著者はこれまで幼児期・学童期の発達障害児とその保護者と関わる機会が多くありました。
著者自身、子どもと接する際に、子どもの自尊心を高めることを強く意識しています。
そして、自尊心を高める上ではやはり〝褒める″ことが非常に重要になります。
しかし、〝褒める″ことは簡単なようで難しくもあります。
それは、子どもの日々の頑張りや変化をよく観察しておく必要があるからです。
よく観察しておくことで、〝褒める″内容がより具体的になっていきます。
そうなると、子どもは自分のことをしっかり見てくれている、理解してくれているといった大人への信頼が高まります。
そうなると、さらに、信頼できる大人の言葉を頼りに自分の行動を変えようとする動機が強く働くようになります。
こうした著者と子どもとの関係性はその保護者にも影響していきます。
例えば、子どものことをよく理解している大人(支援者)からのフィードバックは、保護者の心にもよく届くように思います。
〝最近、年下の子どもの事を気にかけてくれるようになってきました″〝片付けや切り替えがうまくできるようになってきました″など、子どもの望ましい行動に対して保護者にフィードバックすることで、親自身が子どもを肯定的に見ようとする部分が増えるように思います。
支援者としては、子どもの行動の変化がなぜ生じたのかまで仮説を基に伝えることも、保護者が家庭で子どもと接する上でのヒントになるため、〝支援者の関わり方(環境調整なども含む)→子どもの行動の変化″といった因果関係の伝達は重要だと思います。
このように、療育現場での支援者と子どもとの関係(〝褒める″を基盤とした)、支援者から保護者に療育内容をフィードバックすること(望ましい行動の変化を中心に)といったアプローチ方法は、ペアトレといった支援方法に少なからず貢献しているように思います。
子どもの自尊心は、日々の療育・子育ての積み重ねで少しずつ高まっていくのだと思います。
そのため、日々、少しでも、子どもを〝褒める″ための工夫を家庭や学校、療育機関等で連携しながら進めていくことが重要だと思います。
以上、【ペアレントトレーニングとは何か?】発達障害児支援の経験を通して考えるについて見てきました。
繰り返しになりますが、褒めることは簡単ではありません。
それは、関わり手にも観察力と心の余裕が必要だからです。
一方で、褒める‐褒められる関係性がうまく機能していくことで、子どもの力はより発揮されていくのも事実としてあります。
さらに、親・療育者にとっても、子どもを育てることに自信がついていくのだと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で子どもの自尊心を高めていけるように、自身の療育内容を振り返りながら、保護者支援にも力を入れていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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岩坂英巳・宮崎義博(2021)「うまくいかない」ことが「うまくいく」に変わる!発達障害のある子どもがいきいきと輝く「かかわり方」と「工夫」.幻冬舎.