発達障害児の支援をしていると、何がなんでも一番でないと気がすまないといった〝勝ち負け″へのこだわりが非常に強い子どもがいます。
〝勝ち負け″への対応として、〝ソーシャルスキルトレーニング″が一つの方法としてあります。
〝ソーシャルスキルトレーニング(SST)″とは、〝日常生活に関する技能を練習する方法″です。
〝ソーシャルスキルトレーニング″は、発達障害児支援において非常によく活用されています。
それでは、ソーシャルスキルで大切な勝負にこだわる発達障害児に対してどのような対応方法があると考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、ソーシャルスキルで大切な勝ち負けへの対応について、臨床発達心理士である著者の経験と考察も交えながら理解を深めていきたいと思います。
※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。
今回参照する資料は「鴨下賢一(編)立石加奈子・中島そのみ(著)(2013)学校が楽しくなる!発達が気になる子へのソーシャルスキルの教え方.中央法規.」です。
【ソーシャルスキルで大切な勝ち負けへの対応】勝負にこだわる発達障害児への対応方法
以下の順番でお伝えしていきます。
1.〝勝ち負け″へのこだわりに関して事前に確認する点
2.〝勝ち負け″へのこだわりに関して日常でできる原因別対応方法
〝勝ち負け″へのこだわりに関して事前に確認する点
著書には、〝勝ち負け″へのこだわりに関してまず確認しておくべき3点が記載されています(以下、著書引用)。
自分に都合よくルールを決めたりしますか。
同年代よりも年下と遊ぶことが多いですか。
負けそうになると投げ出してしまいますか。
以上の3点を確認しておくことで、〝勝ち負け″へのこだわりに関しての原因とそれに対する対応方法が紐づいてきます。
例えば、著書にあるように、自分が負けないように遊びのルールを勝手に決めてしまうこと、負けない相手との遊びを求めること、自分が負けそうになると遊びを中断する様子などが見られた場合には、勝ち負けへのこだわりが強い可能性があります。
著者の療育現場では、自閉症の特性が強い子どもに特に勝ち負けへのこだわりが見られることがあります。
こうした子どもの中には、白黒思考(0百思考)や先を見通す力の弱さが影響して(つまり負けても大丈夫だと予測できない)、自分が負けそうになるとイライラしたり、時にはパニックになりそうになるまで気持ちが不安定になる子どももいます。
〝勝ち負け″へのこだわりに関して日常でできる原因別対応方法
著書には、〝勝ち負け″へのこだわりに関して、躓いている4つの原因とそれに対する対応方法が記載されています(以下、著書引用)。
1 自分をコントロールする力が弱い
2 自尊心が育っていない
3 感覚面の偏り
4 相手の気持ちを読み取りにくい
それでは、次に以上の4点について、著書の内容を踏まえながら具体的に見ていきます。
自分をコントロールする力が弱い
自己コントロール力が弱いと、勝負事のある遊びにおいて、最後までやり遂げることが難しいことがよく起こります。
支援方法としては、最初に遊びのルールを伝えていくこと(勝ち負けがあるということ)、遊びのゴールを伝えていくこと、最後までやり遂げた場合には褒める、負けた場合には共感的態度で接する関わりが大切になります。
著者の療育現場では、勝ち負けへの対応として、最初は関わり手つまり大人が負ける、次に、ギリギリの状態で負ける、大丈夫だと感じる段階になって関わり手が勝つという段階を踏んだ関わりを取ることがよくあります。
子どもが小学生高学年頃になると、逆に負けてもいいから本気でやって欲しいと望んでくることがよくあります(もちろん、個人差はあります)。
こうした状態になるまで、様々な経験を通して自己コントロール力を育てていくことが大切だと言えます。
自尊心が育っていない
自尊心が非常に高いと、なんでも自分が思うように遊びを進めようとする場合があります。
勝ち負けのある遊びにおいても、同様に自分がうまくいくようにルールを作ることがあります。
支援方法としては、ルールの提示(我慢の経験)とルールが守れた際にしっかりと褒めること、さらには、勝ち負けのない他者と協力する遊び(例えば全員で回数を積み重ねる遊びなど)を取り入れる方法があります。
著者の療育現場では、逆に自分に自信がないことで、勝ち負けのある遊びを避ける子どももいます。
こうした子どもに対しては、少しずつ勝ち負けのある遊びの楽しさを伝えていくこと、また、他者と協力して対戦する遊び(例えば、子どもチームVS大人チーム)などが有効だと感じます。
感覚面の偏り
例えば、聴覚過敏があるなど感覚に偏りがあると、苦手な音の刺激があると遊びに集中して取り組むことが難しくなります。
支援方法としては、苦手な感覚への配慮(環境調整)、また、本人が安心できる感覚アイテムを活用することで集中して取り組むこともあります。
著者の療育現場では、勝ち負けのある遊びも含めて、苦手な感覚刺激があって遊びに集中できない子どもも少なからずいます。
その際には、苦手な感覚を極力無くしていくように環境を整えることを優先するようにしています。
また、無理に遊びへの参加を強要せず、本人が無理のない範囲で参加できるような配慮(短い時間での参加など)が非常に重要だと感じています。
相手の気持ちを読み取りにくい
相手の気持ちの読み取りが苦手だと、相手が嫌だと思っていてもそのことが分からずに自分の都合のいいようにルールを作り変えることがあります。
支援方法としては、事前に遊びのルールを設定して伝えていくこと、ルールを変えることで相手が嫌な気持ちになることを言葉で伝えていく必要があります。
著者の療育現場では、他者の意図・気持ちの理解が苦手な子どもの中には、自分が勝てるように遊びのルールを作る・途中で変更するケースが少なからずあります。
そのため、ルール変更は認めないといったことを最初に伝えて合意を取ること、また、ルールを紙に書いて貼っておくなどの工夫をしてます。
また、遊びの途中でルールを再度伝え直していくことも大切だと言えます(繰り返し伝える)。
最も大切なことは、ルールがあることで、楽しく他者と遊ぶことができたという経験をいかに積み重ねていけるかどうかが鍵だと感じています。
以上、【ソーシャルスキルで大切な勝ち負けへの対応】勝負にこだわる発達障害児への対応方法について見てきました。
今回見てきた4つの原因別対応方法は、ソーシャルスキル獲得を阻害する4つの要因と関連づいています。
関連記事:「【ソーシャルスキル獲得を阻害する4つの要因とは】療育経験を通して考える」
勝ち負けへのこだわりは、療育現場でよく見られる光景です。
大切なことは、勝負にこだわる背景を抑えていくこと、そして、本人の現状の発達段階を踏まえての対応が重要だと言えます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で見られる様々な課題に対して、対応できるスキルを積み上げていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
勝ち負けのこだわりへの対応に関する記事を以下でも紹介しています。
関連記事:「【発達障害児に見られる勝ち負けへの対応】SST・ペアトレ・感覚統合からのアプローチ」
関連記事:「【発達障害児支援で大切な勝ち負けのこだわりへの対応】協力型ゲームを例に考える」
鴨下賢一(編)立石加奈子・中島そのみ(著)(2013)学校が楽しくなる!発達が気になる子へのソーシャルスキルの教え方.中央法規.

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