〝カサンドラ症候群″とは、簡単に言えば、主にパートナーとの関係において、片方の(あるいは両方の)、共感性の乏しさが原因となって生じる心身の不調のことを指します。
それでは、カサンドラ症候群への支援にはどのような方法があると考えられているのでしょう?
そこで、今回は、カサンドラ症候群への支援方法について、愛着アプローチを例に考えを深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「岡田尊司(2018)カサンドラ症候群 身近な人がアスペルガーだったら.角川新書.」です。
カサンドラ症候群への支援方法:愛着アプローチを例に
以下、著書を引用しながら見ていきます。
従来の医学モデルの限界に挑んでいるのが「愛着アプローチ」と呼ぶ新たな発想による改善法だ。愛着アプローチでは、症状を呈している患者を治そうとするよりも、安全基地として機能していない存在にアプローチすることで、問題の改善を図ろうとする。
著書の中では、カサンドラ症候群への支援方法として〝愛着アプローチ″からの改善方法が紹介されています。
〝愛着アプローチ″とは、カサンドラ症候群の症状にかかっている当事者を治療する方法ではなく、当事者と深い関わりのある人(例えば、夫など)に働きかける方法になります。
つまり、カサンドラ症候群の症状を有している当事者の人は、〝共感的応答″の乏しさが症状の背景となっており、そのため、心の拠り所が不足(あるいはない)した状態であるため、周囲に安全基地となる人を作る、あるいは、共感性の乏しいパートナーに安全基地となってもらうよう働きかけるという方法になります。
引き続き著書を引用しながら見ていきます。
妻をうつにしてしまっている夫を教育し、サポートすることで、安全基地としての機能を高め、妻を元気にしようとする。妻に抗うつ薬や精神安定薬を飲ませること以上に、夫に変わってもらうことが、根本的な問題解決につながると考えるのである。
繰り返しになりますが、著書にあるように、〝愛着アプローチ″の重要な視点は、当事者に直接アプローチする方法ではなく、パートナー(あるいは重要な他者になりうる存在)といった周囲の安全基地機能を高める方法になります。
〝愛着アプローチ″に関する記事については以下を参照して頂ければと思います。
関連記事:「愛着アプローチとは何か【「医学モデル」と「愛着モデル」の違いから考える】」
関連記事:「愛着アプローチとは何か【2つのアプローチから考える】」
著者のコメント
著者はこれまでの経験の中で(職場経験に加えプライベートな経験)、カサンドラ症候群だと思わる人たちと関わってきたことがあります。
中には、非常に身近な存在の人もいます。
こうした人たちとの関わりを通して実感していることは、直接本人が改善を試みることには限界があるということです。
もちろん、メンタルケアや服薬により一時的には症状は改善するかもしれません。
しかし、根本的なことは、パートナーとの共感性の不足が要因であるため、心の安全基地機能を高めることが必要となります。
症状が長引くことで、症状の根本的な問題以上に、他の様々なネガティブ体験が積み重なることで、そもそものカサンドラ症候群の原因とは異なる要因も混在してきてしまうことがあります。
例えば、自分が子育ての中の○○で困っていたとき何もしてくれなかった、自分が家事の○○のことで困っていたとき何もしてくれなかったなど、様々な要因が混在してくるということです。
もちろん、個々の要因を見ると個別の原因があるかもしれませんが、カサンドラ症候群の場合の多くは、パートナーからの共感性が乏しく、当の本人の困り感を共感してもらえず、そのため、問題解決に向けての話し合いが進まないことにあると思います。
問題解決の根本には、相手の困り感にまずは共感的理解を示すことが大切になります。
問題解決がうまくできるかどうか以前に、人は自分が困っている、辛い思いをしているという心情をまずは他者にわかってもらいたいという思いがあります。
こうした著者の経験談を見ても、〝愛着アプローチ″の視点は、とても大切なものだと感じることができます。
以上、【カサンドラ症候群への支援方法について】愛着アプローチを例に考えるについて見てきました。
〝カサンドラ″や〝愛着″といった言葉は最近よく耳にするようになりました。
両者の関係は密接に関連しており、〝カサンドラ症候群″への支援方法には、〝愛着″という視点がとても大切になります。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で保護者支援の観点からもカサンドラ症候群への理解を深めていきながら、有効な支援方法についても学びを深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
関連記事:「【カサンドラ症候群とは何か?】発達障害児者支援の現場から考える」
岡田尊司(2018)カサンドラ症候群 身近な人がアスペルガーだったら.角川新書.