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【発達障害児のイライラ・癇癪の原因について】療育経験を通して考える

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発達障害児の中には、〝イライラ・癇癪″が見られることがよくあります。

もちろん、子どもたちは、やりたくて〝イライラ・癇癪″を起こしているわけではありません。

子どもたち一人ひとりに背景となる理由があります。

 

それでは、発達障害児に見られるイライラ・癇癪にはどのような背景要因があると考えられているのでしょうか?

 

そこで、今回は、発達障害児のイライラ・癇癪の原因について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「てんねんDr.(2025)子どもの発達障害がよくわかる本 これ1冊で理解もサポートも!SB Creative.」です。

 

 

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発達障害児のイライラ・癇癪の原因について

ここでは、〝1.家庭での場合″と〝2.学校での場合″とに分けて見ていきます。

 

1.家庭での場合

以下、著書を引用しながら見ていきます。

イライラやかんしゃくの理由の例

家庭での場合

・言葉での表現が苦手で、かんしゃくの形が出ている

・予定が急に変更されて動揺している

・衝動性が高く、今やれないと気が済まない

・宿題にできない問題がある

・宿題をやりたくない

・学校で過剰適応している

・疲れている

・寝不足

・チック症の併発として起きている

・てんかんの併発として起きている

・身体的な理由(鼻が詰まっている、アトピーで皮膚がかゆいなど)でつらい

・外出先の音がうるさい(スーパーの中など)

・外出先の刺激が強すぎる(初めての体験など)

 

著書の内容から、家庭におけるイライラ・癇癪に繋がる原因には、様々な発達特性が影響していることが伺えます。

例えば、ASDの対人関係の問題や同一性保持の問題(変化に対する抵抗)、また、白黒思考など過剰に環境に適応しようとしてしまう問題、感覚過敏の問題などです。

また、ADHDの衝動性の問題やLDの読み書き計算の苦手さなどもあります。

その他、睡眠の問題(睡眠障害)や身体的な問題(アレルギーなど)、他の疾患との併存によって起こる問題などもあります。

 

著者の療育経験の中でも、上記の内容によるイライラ・癇癪はよく見られるものだと感じています。

もちろん、一つの原因によって生じるものもあれば、複数の要因が影響して生じるものもあると思います。

そのため、支援においては、家庭状況のアセスメントを保護者から聞き取りながら、事業所でどのような過ごしが子どもたちの安心・安全に繋がっていくかを検討していくことが大切だと感じています。

例えば、全体的な疲労感があり、イライラ・癇癪が起こりやすい状況においては、静かな空間やゆっくり取り組める活動内容の工夫が必要だと言えます。

 

 

2.学校での場合

以下、著書を引用しながら見ていきます。

イライラやかんしゃくの理由の例

学校での場合

・言葉での表現が苦手で、かんしゃくの形が出ている

・見通しが立たないことが多い

・周囲の人の声や物音で集中できない

・集団行動が合わない

・支援級の子どもとの相性が悪い

・先生との相性が悪い

・学級崩壊などで環境が悪く、疲れている

・身体的な理由でつらい

 

著書の内容から、学校においてもイライラ・癇癪に繋がる原因には、様々な発達特性が影響していることが伺えます。

家庭とは異なり学校には、集団行動や集団におけるルール理解とその実行、学校の予定(一日のスケジュールや行事など)、様々な人(先生や生徒)との関わり、家庭にはない音などがあります。

 

著者は現在(執筆時)、放課後等デイサービスで療育をしているため、学校との連携が必須な領域にいます。

子どもたちの多くが、学校からやってくるため、学校での過ごしの状況がデイの過ごしに大きく影響してくるためです。

例えば、学校の行事などが近づいてくることで、子どもの中にはいつもと違う不安感を強く抱えてくることで、普段よりもイライラ・癇癪を起こしやすい場合があります。

また、学校での疲れが強い場合にもまた、些細なことでイライラ・癇癪に繋がることも少なからず見られます。

そのため、支援においては、学校との連携を強化していきながら、放課後等デイサービスといった特定の環境での過ごしだけにフォーカスするのではなく、家庭・学校・デイといった子どもたちが関わる領域のアセスメントと状況共有がとても必要になってくると感じています。

 

 


以上、【発達障害児のイライラ・癇癪の原因について】療育経験を通して考えるについて見てきました。

子どもたちは、様々な環境の中で生活しています。

支援において大切なことは、環境へのアセスメントを踏まえて、イライラ・癇癪への対応策を講じていくことだと言えます。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で関わる子どもたちが少しでも安心して楽しく過ごしていけるような支援を目指していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【発達障害児に見られるパニック・癇癪への対応】3つのポイントを通して考える

 

 

てんねんDr.(2025)子どもの発達障害がよくわかる本 これ1冊で理解もサポートも!SB Creative.

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