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【実行機能への支援②】集団の支援方法について考える

投稿日:2023年12月1日 更新日:

実行機能″とは、〝遂行能力″や〝やり遂げる力″とも言われています。

実行機能の力は、その後の学力や対人関係、そして健康などに影響していくと考えられています。

そして、IQなどに見られる遺伝的要因の強さよりも、環境要因の影響を強く受けると言われています。

つまり、支援の可能性が大いにあると言えます。

 

それでは、実行機能への支援にはどのような方法があるのでしょうか?

 

そこで、今回は、実行機能への支援について、集団の支援方法にフォーカスして理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「森口佑介(2019)自分をコントロールする力 非認知スキルの心理学.講談社現代新書.」です。

 

 

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実行機能への支援:集団の支援方法

著書には、以下の集団の支援方法が記載されています(以下、著書引用)。

家庭教育を補償する幼児教育・保育

 

心の道具

 

モンテッソーリ教育

 

 


それでは、それぞれについて具体的に見ていきます。

 

家庭教育を補償する幼児教育・保育

以下、著書を引用しながら見ていきます。

そもそも幼稚園や保育園に行くこと自体が子どもの実行機能の発達にとって重要な意義があります。

 

幼稚園もしくは保育園に通うことが子どもの実行機能を下支えする可能性が最近の研究から示されています。

 

著書にあるように、幼稚園・保育園に行くことが実行機能の発達にとってポジティブな影響を与えると言われています。

それは、保育者とのアタッチメントの形成が実行機能の向上に繋がるからです。

仮に、家庭で養育者との関係性に難しさがあっても、その関係性を補填する役割が保育者にはあるからです。

ここで大切なことは、幼稚園・保育園に通うこと=実行機能の発達の向上、といった図式ではなく、関わる保育者の質が重要だということです。

つまり、子どもに関わる保育者が子どもの発達や子どもの思いを理解して、質の高い応答性を示すことが必要不可欠だということです。

安定したアタッチメントの形成とは、そもそも、子どもの発信に対して、的確な応答を示すことで徐々に形成されるものでした。

こうした保育者とのアタッチメントの安定性が、実行機能の向上に影響してくると考えられています。

 

心の道具

以下、著書を引用しながら見ていきます。

このプログラムでは、子どもたちに道具を使わせることで実行機能や読み書きの能力を高めようとします。ここでの道具は、物理的な道具も含みますし、心理的な道具も含みます。

 

著書にある〝物理的な道具″とは、例えば、絵本を二人ペアで読む際に、口の絵と耳の絵を持たせるといった道具を活用していくことで、自分の役割を意識させる方法などがあります。

つまり、口の絵を持っている人が絵本読む、耳の絵を持っている人が聞くという役割です。

心理的な道具″とは、独り言やごっこ遊びなどがあります。

言葉は思考の道具とも言われているように、独り言(外言→内言)や他者とあるテーマにそって役割を演じるといった活動が実行機能の向上に繋がると考えられています。

 

モンテッソーリ教育

以下、著書を引用しながら見ていきます。

モンテッソーリ教育といえば、独特の教具や異年齢教育が取り上げられることもありますが、最大の主眼は子どもの自主性を重視するという点です。

 

モンテッソーリ教育は、世界中で注目されている教育法です。

モンテッソーリ・マフィアなど、世界のあらゆる著名人が受けた教育法でも有名です。

モンテッソーリ教育では、様々な教材・教具を整えていきながら、子どもたち自身が自分でやりたい教材・教具を選び、繰り返し集中して取り組み、能力を向上させていく方法を取っています。

著書にあるように、自分がやりたい活動に自主的に関わることを重視した教育法です。

モンテッソーリ教育もまた、実行機能の向上に繋がると言われています。

 

 

最近の実行機能への支援の動向について

これまで、実行機能の支援について、集団の支援方法について見てきました。

現在、〝心の道具″と〝モンテッソーリ教育″は、実行機能の向上について懐疑的な研究結果も出てきています。

その中で、最も実行機能の働きに効果があると考えられているものが、〝心の道具″と〝モンテッソーリ教育″といった特定のプログラムというよりも、保育者や先生の関わり方の質などが強く影響していることが分かってきています。

この点については以下の記事を参照して頂ければと思います。

 

関連記事:「【実行機能への支援で最も大切なこと】療育経験を通して考える

 

 


以上、【実行機能への支援②】集団の支援方法について考えるについて見てきました。

実行機能には様々な支援方法があります。

支援の効果に関する研究知見は、ここ10数年で変化してきているといった印象を受けます。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も実行機能への理解を深めていきながら、今現場で関わる子どもたちに質の高い関わり方ができるように、自分の関わり方を見つめ直していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【実行機能への支援①】個別の支援方法について考える

 

森口佑介(2019)自分をコントロールする力 非認知スキルの心理学.講談社現代新書.

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