〝社会性″とは、様々な定義や表現があるかと思いますが、一つ定義を取り上げると、〝人とある対象を共有し、その共有体験を楽しむといった共同行為″だと言えます。
自閉症をはじめ発達障害のある人たちの中には、〝社会性″に困難さを抱えている場合が多くあります。
それでは、発達障害児・者の社会性の困難さにはどのようなものがあるのでしょうか?
そして、社会性への支援方法にはどのようなものがあるのでしょうか?
そこで、今回は、療育現場で発達障害の人たちとも関わりのある臨床発達心理士である著者が発達障害の〝社会性″に関するおすすめ本5選【中級編】について紹介していきます。
実際にこれから紹介する本を通して著者自身、発達障害の〝社会性″への理解が深まった、支援の役に立った等、有益な知識を得ることができました。
ぜひ、参考にしていただければ幸いです。
1~5の番号はランキングではありません。紹介内容を見て入りやすい本から手に取って頂けるといいかと思います。
1.発達障害のある子の社会性とコミュニケーションの支援 (ハンディシリーズ―発達障害支援・特別支援教育ナビ)
大学教員・心理士・当事者の人たちが発達障害児の〝社会性″と〝コミュニケーション″をテーマに書いた本になります。
〝社会性″と〝コミュニケーション″について100ページ程度の短い分量でまとまっています。
家庭や学校、余暇活動など様々なライフ環境の中での支援方法、ICTの活用方法、社会性・コミュニケーションの発達における自己理解、当事者から見た視点など非常に多岐にわたる内容が記載されています。
発達障害の子どもの〝社会性″と〝コミュニケーション″について理解を深めたいと考えている方にお勧めです。
2.自閉症児のための社会性発達支援プログラム―意図と情動の共有による共同行為
本書は社会性の研究で著名な〝長崎勤さん″が手掛けた本になります。
この本では、自閉症児を対象に、社会性での躓きの要因、そして、社会性の発達段階、各段階における関わり方(遊びの内容)などが記載されています。
社会性の発達段階には、〝行動と情動の共有″→〝目標と知覚の共有″→〝意図と注意の共有″があります。
自閉症児には定型発達児とは異なる社会性の育ち、そして関わり方があるということが本書を読むことで理解を深めることができます。
療育現場などで自閉症児との関わりのある心理士・保育士などに特にお勧めです。
3.「気になる」子どもの社会性発達の理解と支援: チェックリストを活用した保育の支援計画の立案
この本では〝社会性発達チェックリスト″についての説明が分かりやすく記載されています。
このチェックリストは、保育現場で〝気になる″子どもの行動の背景を理解するために開発された質問紙になります。
本書では、チェックリストから見えてくる子どもの発達や保育計画の立て方など具体的なアクションについても書かれています。
そのため、実際の保育現場で〝気になる″子がいるがその子のことを理解したい、そして、どのように支援していけばいいかを考えている保育者などに特にお勧めです。
4.社会性発達支援のユニバーサルデザイン (シリーズ:発達支援のユニバーサルデザイン)
本書では、〝社会性″をキーワードに、子どもから成人期までのライフステージごとの課題や支援について様々な知見が取り上げられています。
また、最初の章では〝社会性″について分かりやすい説明があるため、そもそも〝社会性″とは何かを理解したいと考えている方にとっても読み応えのある本です。
教育・福祉など発達支援に関わっている方の中で、〝社会性″についての理解を深めたい、現場の問題解決の手がかりを得たいと考えている方にお勧めです。
社会性発達支援のユニバーサルデザイン (シリーズ:発達支援のユニバーサルデザイン 第 1巻)
5.社会・情動発達とその支援 (講座・臨床発達心理学)
本書は、臨床発達心理士を目指している方向け用に書かれた本です。
タイトルにある〝社会″と〝情動″はどちらも単独では語ることが難しい関係にあるものです。
それだけ、〝社会″と〝情動″は密接に関係しながら発達していくということです。
この本の内容には、社会・情動発達の理論と社会・情動発達のアセスメントと支援に関する様々な知見が記載されています。
人間の社会・情動がどのように発達していくのか、そして、どのような支援方法があるのか、ということの理解を深めることができます。
臨床発達心理士を目指されている方だけではなく、発達支援に携わる方の中で、社会・情動発達への理解を深めたいと考えている方にもお勧めです。