発達理解・発達支援・ブログ

人間の多様な理解と支援を目指して!

成果 療育

療育の成果について-イメージを形にする力-

投稿日:2022年1月11日 更新日:

療育の成果について、どのような働きかけが成果に繋がったのかを特定することは難しいことです。まず、何を持って成果と言えるのか、そして、成果には様々な要因が絡んでいるからだと思います。

さらに、成果(変化)にも、短期のものと長期のものなど時間軸の捉えの違いによって見えてくるもの、内容が異なるかと思います。

そこで今回は、私自身の放課後等デイサービスでの長期の子どもたちとの関わりからポジティブな変化が見られた例を長期の視点から以下に事例を簡単に紹介したいと思います。

 

 

スポンサーリンク

療育の成果について-イメージを形にする力-

A君の例→イメージを形にする力がついてきた例

小学校4年生のA君は放課後等デイサービスを利用して3年程度になります。

放課後等デイサービスを利用した当初は「○○作って!○○作ってほしい!」など、遊びたい大人に色々と作ってほしいことをお願いすることが多くありました(もちろん今でもあります)。

工作遊びなどの経験値がそれほど多くはないA君は、とにかく車や飛行機など壮大なものを作ってほしいとお願いすることが多くありました。そして、自分のイメージと違うとイライラすることが多くありました。

工作をしていても、実際に切ったり貼ったりするなど道具の使用も得意ではありませんでした。そのため、作る作業の多くは大人がやる場面が多くありました。

イメージを大人と共有することが難しく、手先も不器用さがありました。

そのため、スタッフの取り組みとしては、A君の好きなことを知ること、そして、その中で、どのようなイメージを思い描いているのかを、様々な遊びを手掛かりに共有していくことから始まりました。

最初は「違う!こうしたかった!」など、すれ違う場面が多くあり、また、途中で飽きてしまうこともしばしばでした。

それが長い時間をかけて関わり続けることで、徐々に、A君が好きなこと、どのようなイメージを思い浮かべているのかを推測することができるようになってきました。

それは、完成した工作をA君が見た時の反応から読み取ることができました。

A君と徐々にイメージを共有できる頻度が増すと、次は、口頭での伝えや大人がイラストに書くだけではなく、iPadで写真を見せるなどして最初にイメージを共有する取り組みへと移行していきました。

これには、大人も写真を見て段ボールなどでA君が好きな作品を作れるのかといった(あるいはこういったものが好きそうだといった)A君との共有体験が非常に重要だと感じます。

それに加え、A君は、ハサミの使用や、色を塗るなど、徐々に1人でできることも増えていきました。これは、学校や家庭での経験も大きかったと思います。

こうして、大人とイメージを共有し、それを作るにあたり、作業を役割分担し(A君は切る・塗るなど)、長時間(長いと数時間)作業に集中し、作品を多く作ることができるようになっていきました。

完成した作品を得意げに周囲に見せる様子も増え、達成感をもつことも増えました。

こうした成功体験を重ねることで、イメージを形にする力が経験をもとに構築されてきたのだと思います。

大人から見ると少しずつの進歩も、数年の関わりを振り返ると大きな成長であると実感します!

 


こうして、イメージを形にする力が徐々についていく過程には、イメージを大人と共有する経験、そして、イメージを具現化するために様々な道具などを活用する力(操作性の向上)、試行錯誤して作品を作ることの繰り返しが重要かと思います。

何かを形にするには、子供1人では難しい場面が多くあります。

私自身、1人の支援者として、子供の能力を分析することが大切であり、その前提として、普段の子どもとの関わり、共有体験の蓄積が重要であると実感します。

今後も今回の事例のように、長期的な関わりから子どもたちの成長、療育の成果を振り返っていく中で、今後の支援に繋げていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

スポンサーリンク

-成果, 療育

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

【〝集団遊び″と療育について】子どもたちの成長・発達から見た〝集団遊び″の重要性

著者は長年、発達に躓きある子どもたちに療育をしています。 子どもたちは一人ひとりとても個性的であり、個別の理解と関わり方がとても大切だと実感しています。 その中で、〝集団遊び″による子どもたちの成長・ …

発達支援(理論編):療育施設で役立つ視点について①

今回は私が以前の療育施設の職場で非常に役に立った視点についていくつかお伝えしていこうと思います。 以下の理論を知ることで、障害のある子どもたちの発達段階についての理解が加速度的に進んだと実感しています …

療育で大切な視点-制限よりも満足感を!-

療育(発達支援)の現場に携わっていると、子どもたちの困った行動や気になる行動などにどうしても目が向いてしまいます。 もともと、発達に躓きのある子どもたちということもありますので、まず大切となるのは、発 …

関係の質の違いが子どもの行動を変える-療育現場で関わりの難しい子どもの事例を通して考える-

療育現場で子どもたちと関わっていると、子ども⇔大人といった二者関係の違いによって子どもの行動にも様々な違いあるように思います。 例えば、A君にとって大人のTさんは工作遊びが得意といったよく遊んでくれる …

【療育を通して感じる子どもたちの成長の要因とは何か?】6年間の関わりから学んだこと

著者は、長年、発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育をしています。 最近あった大きなエピソードとして、著者が小学一年生の頃から見ていた子どもたちが無事に卒業を迎えたというものです。 6年前を振 …