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「愛情の器」モデル 愛着障害

愛着障害への支援:「愛情の器」モデルを例に

投稿日:2020年8月25日 更新日:

愛着障害に対しては、その特徴を適切に踏まえた支援が必要になります。

臨床発達心理士・学校心理士である米澤好史氏は、長年の現場での実践研究を踏まえて、「愛情の器」モデルに基づく愛着修復プログラム(ARPRAM)を開発し、愛着障害への支援に活かしてきました。

 

それでは、「愛情の器」モデルとは一体どのような支援方法なのでしょうか?

 

そこで、今回は、「愛情の器」モデルを例に、愛着障害への支援について、どのような理解や関わり方が重要であるのかをお伝えしていこうと思います。

 

 

今回参照する資料は「米澤好史(2020)事例でわかる!愛着障害 現場で活かせる理論と支援を.ほんの森出版.」です。

 

 

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愛着障害への支援:「愛情の器」モデルを例に

大切なポイントとして、愛着障害の支援は単に関わるだけでは成功しないということです。

関わったことが子どもにどう受け止められ、そこからどのような感情が生じ、愛情として感じられたかをモニターすることが必要です。そして、その感じた感情、愛情をしっかり貯めて、以後も持続的行動のエネルギーとして使える状態にあるかを意識した支援が必要です。

以下に、愛着タイプ別に「愛情の器」モデルについて、それぞれの特徴について説明していきます(愛着タイプについては、「愛着障害の三つのタイプについて考える」に記載しています)。

 


ポイントは、器の存在と受け入れ口器の底の特徴です。

①「安定型愛着タイプ」

器の存在と受け入れ口の特徴

このタイプは、愛着形成ができており、「愛情の器」の受け入れ口は広く、どんな関わりも愛情として受け止めることができます。

器の底の特徴

「愛情の器」がしっかりしているので、愛情を感じ取り、それをしっかりと貯めることが可能です。

②「抑制タイプ」

器の存在と受け入れ口の特徴

このタイプは、「愛情の器」そのものができていなく、関わりの受け入れを拒否しています。ですので、一から「愛情の器」を作らないといけないため、愛着の修復・支援に時間がかかります。

器の底の特徴

「愛情の器」そのものがないため、受け止めを拒否しているので、愛情エネルギーを貯めることはできません。

③「脱抑制タイプ」

器の存在と受け入れ口の特徴

このタイプは、器の受け入れ口が狭いため、そこに入った関わりだけが愛情として受け止められるため、支援に苦労します。本人も、この狭い受け入れ口に入るものだけを求めますが、それに応えることは、狭い受け入れ口を広げることにならないばかりか、さらに受け入れ口を狭くしてしまいます。

いかに狭い受け入れ口から入り、それを広げていけるインパクトのある関わりができるかが大切になります。

器の底の特徴

器の底には穴があり、ポジティブな感情・愛情が入ってきても抜け落ちてしまいます。感じたポジティブな感情・愛情はすぐになくなってしまいます。

④「ASDと愛着障害併存タイプ」

器の存在と受け入れ口の特徴

このタイプは、狭い受け入れ口に蓋も付いていて、この蓋が閉まっているときには、一切関わりは受け止められない、愛情として感じられないことになります。つまり、受け入れ口の蓋が閉まっているときに行った関わりは、何をやってもうまくいきません。

ですので、このタイプと関わるときには、一度や二度、失敗してもすぐに諦めず、蓋が開いているタイミングを見計らって、再度試してみることが重要です。

器の底の特徴

底に穴があるため、「蓋を開けてもいいんだ」「この感じた感情・愛情を貯めておいてもいいんだ」という感覚を身に付けることが支援として必要になります。

以上が、愛着タイプ別の「愛情の器」モデルの特徴になります。

 

 

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それでは、次に、「愛情の器」モデルに基づく愛着修復プログラムについて、支援のポイントをお伝えします(それぞれのタイプ別の対応や具体的な支援の事例などは参照図書をお読みになって下さい)。

Ⅰ:キーパーソンを決める

大切な視点は、誰が子どもの愛着対象(特定の人)になるか、つまり、キーパーソンの決定が絶対に必要になります。この意識なしには、愛着形成・修復はできません。

Ⅱ:感情のラベリング支援(感情学習)

特定の人(キーパーソン)と一緒に、子どもの感情の発達が未熟なことを踏まえて、感情のラベリング支援で感情学習を行うことが必要です。

「誰と一緒だから、その感情が生じたのか」を確認すること、すなわち、愛着対象の意識が、その人に対する安全・安心基地機能を育むことに繋がります。

Ⅲ:主導権をキーパーソンが握る(先手支援)

子どもが何かを欲しがる・要求する前に「先手」で関わる支援、キーパーソンの主導権を意識した支援が必要です。

これが愛情欲求エスカレート現象、自己防衛を防ぎ、「愛情の器」の受け入れ口を広げることになります。

要求しなくても先に愛情を感じさせてくれる相手にこそ安心感を抱くことになり、「愛情の器」の受け入れ口を広げることに繋がります。

 

 


以上、愛着障害への支援として、いくつかポイントを説明してきました。

愛着障害は、薬物療法やカウンセリングなどの心理療法では治せないと言われています。

「愛情の器」に基づく愛着修復プログラムは、日常生活に埋め込まれた支援プログラムであるため、開かれた応用効果が期待できます。そして、どの発達段階の子ども、大人にも使用可能であるため、「いつでも」「どこでも」できる支援プログラムになります。

 

 


愛着・愛着障害に関するお勧め関連書籍の紹介

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米澤好史(2020)事例でわかる!愛着障害 現場で活かせる理論と支援を.ほんの森出版.

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