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【発達障害児の〝こだわり″への対応】勝ち負けを例に考える

投稿日:2023年7月8日 更新日:

発達障害児の中には、とにかく勝負事で何がなんでも勝ちたいといった思いを強く持っている子もいます。

以前は、〝一番病″などとも言われていましたが、著者が勤める放課後等デイサービスに通っている子どもの中にも見られます。

 

それでは、勝ちにこだわる子どもへの対応にはどのような方法があると考えられているのでしょうか?

 

そこで、今回は、発達障害児の〝こだわり″への対応として、勝ち負けを例に理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「小嶋悠紀(2023)発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた声かけ・接し方大全 イライラ・不安・パニックを減らす100のスキル.講談社.」です。

 

 

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〝こだわり″への対応:勝ち負けを例に

以下、著書を引用しながら見ていきます。

いずれにしても「勝へのこだわりが強すぎる子」には、「負ける経験」を積ませて、慣れさせなければいけません。

 

著書にあるように、勝にこだわる子どもへの対応として、〝負けの経験を積ませる″ことも大切だと考えられています。

人生の様々な局面において、人は負けを経験します。

そして、負けを受け入れることで、そこから学び成長することもできます。

一方で、直ぐに〝負けの経験を積ませる″対応を取ることも難しいと感じます。

なぜなら、勝ちへのこだわりが非常に強い子は、自分が負けると癇癪・パニックを起こしたり、負けそうになるだけでも不機嫌になりその場から去るといった行動を見せることがあるからです。

つまり、直ぐには負けを受け入れることが難しいということです。

大切な対応方法として〝少しずつ″、その子の状態を見ながら、負けの経験を積み重ねていけるような(本人の中で受け入れることができる)関わりをしていくことです。

 

 

遊びを通して勝ち負けを練習する方法

著書には、カードゲームなどのアイテムを活用し勝ち負けの練習をする例が記載されています。

以下、引き続き著書を引用しながら見ていきます。

この「追いつめて→勝たせる」を何度も繰り返しましょう。根気よく、何度も繰り返していると、<今日は子どもを負かしても大丈夫だ>と思えるタイミングが、きっと見えてきます。

 

そして、負かしても大丈夫なタイミングとは、子どもの表情(雰囲気)→〝表情が普段よりも険しくなく穏やか″といった様子から判断できると著書には記載されています。

 

著書には、カードゲームなどを活用して勝ち負けの練習を進めていく際に、まずは、子どもをギリギリまで追い詰めるも最後には勝たせることの繰り返しから始めることが良いと記載されています。

そして、この繰り返しによっていつか負かしても良いタイミングが必ず訪れ、そして、負かしても良いタイミングとは、子どもの表情(穏やかな表情)などから判断できると記載されています。

 

人はある程度、同じ遊びをくり返していくことで、負けないまでも負けそうな状態を少しずつ許容できるようになり、その結果、いつかは負けても大丈夫な時が訪れるのだと思います。

つまり、負けそうな状態の繰り返しの中で、競争への免疫(負けて大丈夫そうだという感覚)が湧いてくるのかもしれません。

著者もこれまでの経験の中で、すぐに子どもを負かせてしまいイライラが収まらなくなってしまったことがありました。

逆に圧倒的な力を持って負かせることで、負けを受け入れることができた例もあります。

その中で、今回取り上げた著書に記載のある対応方法が様々な子どもにうまく適応できるものだと考えます。

著者も同じ遊びの中で勝負を繰り返すことで、子どもの方から〝全力でやって!″〝本気でやって!″など、負けても良いと感じ取れる発信が見られるタイミングがあったことを思い出します。

そして、この場合に、子どもを本気で負かせると案外スッキリと負けを受け入れることがあります。

そして、その時に、〝負け″を経験した子どもにしっかりと声をかける必要があります。

著書には、負けた子に対して、〝ま、いっか″と気持ちを切り替える声掛けをモデリングし、うまく言えたら良く褒めるといったフィードバックも必要であると記載されています。

このように〝負けた″後の対応も合わせて大切だということです。

 

 


以上、【発達障害児の〝こだわり″への対応】勝ち負けを例に考えるについて見てきました。

これまで見てきたように発達障害児の中には勝ちへの〝こだわり″を強く持っている子どももいます。

しかし、いつも勝ち続けることは現実不可能であり、負けから学ぶこともまたあります。

そのため、小さい頃から、負けることへの免疫を少しずつつけていくことも大切です。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も発達障害児が持つ様々なこだわりを理解していきながら、現場でできる対応力を高めていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【自閉症の〝こだわり″への支援で大切なこと】療育経験を通して考える

 

小嶋悠紀(2023)発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた声かけ・接し方大全 イライラ・不安・パニックを減らす100のスキル.講談社.

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