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【マインドブラインドネス仮説とは何か?】自閉症の特徴について考える

投稿日:2023年5月24日 更新日:

自閉症(自閉症スペクトラム障害:ASD)とは、対人コミュニケーションの困難さとこだわり行動を主な特徴とする発達障害です。

自閉症には様々な行動面や心理面の特徴があると考えられています。

中でも、心の理解の弱さが自閉症の特徴として様々な書籍等で取り上げられています。

 

それでは、心の理解の弱さとはどのようなものであり、そして、自閉症の人にはどのような特徴が見られるのでしょうか?

 

そこで、今回は、心の理解の困難さを説明したマインドブラインドネス仮説とは何かについて、自閉症の特徴と関連付けながら考えを深めていきたいと思います。

 

 

今回、参照する資料は「サイモン・バロン=コーエン(著)水野薫・鳥居深雪・岡田智(訳)(2011)自閉症スペクトラム入門 脳・心理から教育・治療までの最新知識.中央法規.」です。

 

 

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マインドブラインドネス仮説とは何か?自閉症の特徴について

以下、著書を引用しながら見ていきます。

「心の理論(Theory of Mind;TOM)」は、他者の行動の意味を理解し、行動を予測するための、他者の視点に立つ能力であり、他者の考えや気持ちを理解する能力のことである。これはときには、〝マインドリーディング″(mind-reading)とか〝心理化″(mentalizing)とも言われる。

 

この仮説によると、自閉症とアスペルガー症候群の子どもたちは、〝マインドブラインドネス″があってTOMの発達が遅れていると説明される。

 

著書の内容から、マインドブラインドネス仮説とは、心の理論(TOM)といった他者の心の状態を読み取る力の弱さ(遅れ)のことであり、自閉症(アスペルガー症候群は現在の自閉スペクトラム症に統合された)の人たちは、心の理論の発達の遅れや困難さがあると考えられています。

発達の遅れの指標で言えば、定型発達児とは異なり、〝共同注意″(他者の視線に目を向けること)や、〝ふり遊び″(他者の遊びを真似る)などの行動に遅れ(あるいは特有の発達過程)が見られるとされています。

そして、定型発達児が通過できる心の理論に関連する課題〝seeing leads to knowing テスト″(通常は3歳頃に通過)や〝サリーとアンの課題″(通常は4歳頃に通過)に遅れが生じます。

一般的に、心の理論の獲得は〝誤信念課題″が理解できるようになって、獲得したものと考えられています。

〝誤信念課題″とは、〝他者の心を理解する力″とも言われており、サリーとアンの課題やスマーティ課題などが有名です。

知的に遅れのない自閉症の人たちは、〝誤信念課題″の通過時期が言語発達年齢9歳頃に通過すると言われています。

 

関連記事:「自閉症の心の理論について考える

関連記事:「【心の理論とは何か?】療育経験を通して考える

 

 

心の理論の獲得のサインである〝だまし″について

心の理論の獲得の指標には、〝だまし″の理解も重要な指標であると考えらえています。

以下、著書を引用しながら見ていきます。

定型発達をした子どもたちが「だまし」を理解し、他者をだまそうとする事実は、正常なTOMのサインであると言える。なぜなら、「だまし」とは、実際にうそであるときに、それがあたかも本当であるようにと信じさせようとすることにほかならないからである。これは、他者の心を操作するプロセスである。

 

著書の内容から、心を理論の獲得の指標の一つとして、〝だまし″といった他者の心の状態を理解し、他者の心を操作する力もTOM獲得の重要なサインであると考えられています。

〝だまし″は相手の心の状態(例えば、台所におやつがしまってあるという相手の知識を理解している)を把握している状況において、相手が持っている知識とは異なる〝うそ″の情報を与える(例えば、リビングのテーブルにおやつを移し替えたという情報を提示する)などが考えられます。

この〝だまし″の構図は、他者の心の状態を理解し、その心の状態を操作するプロセスであるため、〝誤信念“を相手の心の生じさせるとも言い換えることができます。

これは、目には見えない他者の心(信念、意図、知識など)を理解していることが大前提となります。

そして、自閉症の人たちは、〝だまし″の理解が遅れていると考えられています。

 

関連記事:「【人はなぜ〝うそ″がつけるようになるのか?】心の理論の発達から考える

関連記事:「【〝うそ″はどのように発達するのか?】心の理論の視点から考える

 

 

心の理論は〝他者の行動を予測″するもの

心の理論の獲得は、他者の心の状態を理解するだけではなく、他者の次の行動を予測する力とも関連があると言われています。

以下、著書を引用しながら見ていきます。

われわれが心を読んだりTOMを使ったりするときには、他者の行動の意味を理解するだけでなく(どうして振り向いんだろう?何で左のほうを見たんだろう?)、次に何をするかを予測するに違いない(もし、見ている物が欲しいのなら近づくだろうし、見ている物を怖がっているのなら、逃げるに違いない)。

 

ある意味、TOMは、他者の行動の説明や予測をする一つの仮説とみなすことができる。

 

著書の内容から、心を理論は、他者が次に取ろうとしている行動を予測するものでもあると考えられています。

例えば、Aさんが部屋に入ってきて、部屋の様々なところに視線をおくっていたとしましょう。

この場合、多くの人は一つの仮説として、Aさんは何かを探しているのかもしれない、というAさんの心の状態を推論すると思います。

このように、私たちは言葉を介せずとも、視線をはじめとした非言語情報を元に他者の行動を予測しています。

そして、自閉症の人たちは他者の視線の読み取りが苦手であるため、上記に記載したような行動予測に苦手さがあると考えられています。

 

関連記事:「【自閉症者の心の理論の特徴について】自閉症者はどのように心を理解しているのか?

 

 


以上、【マインドブラインドネス仮説とは何か?】自閉症の特徴について考えるについて見てきました。

心の理論に困難さがあると、他者とのコミュニケーションを図る上で支障がでてくることがあります。

著者は自閉症など発達に躓きのある子どもたちへの療育をしているため、これまで見たきた心の理論についての理解は、支援を行う上でとても大切な知識だと感じています。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も発達に躓きのある人たちの行動の背景を考える知識を学んでいきながら現場での実践を大切にしていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

サイモン・バロン=コーエン(著)水野薫・鳥居深雪・岡田智(訳)(2011)自閉症スペクトラム入門 脳・心理から教育・治療までの最新知識.中央法規.

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